口の奥の本棚、最初にご紹介するのはこの絵本。
はいじまのぶひこ作『きこえる?』
福音館書店(ブラティスラヴァ世界絵本原画展 金のりんご賞 受賞)
なぜこの絵本がトップバッターかといえば、それは私の好きな 大人の絵本の楽しみ方 に一番ぴったりだから。
私が絵本を読むときは、誰もいない部屋へ行きます。テレビを消します。あったかい飲み物を入れます。何の音もしない、誰も割り込んでこない15分を用意します。
無音の中で、そっとこの絵本を開いてください。
2色で作られたシンプルな絵。
キャンバスに画用紙を貼り合わせたような、質感のあたたかさ。
繰り返される「きこえる?」という問いかけにじっと耳を澄ませてみれば、心の中に広がる大きな静寂と、微かなおとを感じる…自然のおとや、命の生きるおと、自分をよぶこえ…。
それはあなたが自然の中に生き、他の命とともに生き、だれかに生かされている証。
シンプルな文章と絵の中に広がる深い深い奥行きが、自分の心を鎮め、そっと省みる時間を与えてくれます。
そして不思議なことに、読後日常生活の中で、自分の心の奥深くにこの静寂の世界があることを思い出す瞬間があるのです。
きこえる?…自然のおとや、命のいきるおと、自分をよぶこえ…。
心の静けさにはたと気づく瞬間は、自分を取り戻す瞬間になるのです。
子どもが楽しむのとはまた違った理由で、大人が楽しめる絵本というのも存在します。
このブログでは、子どものためでも、子育てするお母さんのためでもなく、日々社会の中で働き生きる普通の大人に向けて絵本(または児童文学)の紹介をします。
絵本のいいところは、ちょっとの時間で楽しめるところ。忙しい一日を終えた夜、珍しく早起きできた朝、ちょっとの時間を作って表紙を開いてみてください。
あははと笑えたり、じーんとしたり、癒されたり、そうして読み終えたとき、自分の世界の見方が少しだけ変わっているかもしれません。